手芸が下手でも苦手でも…、ソーイングで自身の心と向き合う時間
東真実さん(36歳・仮名)のひとりのお愉しみはソーイング。ちなみに、裁縫はまったく得意ではないんだとか。
「ソーイングが趣味か?って聞かれたら、それもちょっと違うような気がするんですけど…」。
真実さんいわく、「趣味というのは、その道で先生や指導者になるような、そこまでの野望はないけれど、フツーの人よりちょっと得意、できたものを見せびらかしたい!そういうものですよね?趣味のサークルとか入ってる人、なんか発表会とか、やたら、するじゃないですか?中には、展示即売会とか、しちゃったりする人もいて…。そんなもの、べつに欲しくもなんともないけど、自分の発表会や展示会にも人呼びたいし、自分のつくったものも買って欲しいから、仕方なく買う…。そういうサークル交流、サークル所属の人たち見てると、ムナシイなあ、って感じちゃいます。そんなこと口に出したら感じ悪いから、口が裂けても言いませんけど」。
今、メチャクチャ言ってますけど…(笑)
「まあ、ここは…。ひとつ、オフレコってことで(笑)」。
では、真実さんにとって、趣味ではない、得意でない、ソーイングって…。いったいなんなんでしょう?
「純粋に、ひとりの愉しみですね。誰に見せるものでもない、誇るものでもない。私、できた作品にはあまり興味ないんですよ。よく、できた作品をきれいに写真に撮って、SNSとか、画像共有サイトなんかにアップするような人いますけれど…。そういうのも、自分的にはまったく興味持てない」。
では、完成した作品はどうしてるんですか?
「家に置いてあります。でもただ、置いてるってだけですね。飾ってるってわけでもない…。なんとなく、そのへんにポンと無造作にあるか、どっかにしまってる…。どこかは忘れましたが」。
淡泊ですね…。ソーイング、ホントに愉しんでいるんでしょうか?
「私にとってソーイングって、まず、なにをつくろうか、ってことから始まる。それで、まずは自分で設計図みたいなの、おこしてみるんですよ」。
作り方の本を参考にしたりはしない?苦手なわりには、ずいぶん思いきったやり方ですね!
「苦手だから、じゃないですか?成功する、完成度の高いものをつくろうというビジョンはないから…。大事なのは、当初のイメージ、インスピレーションと、それにいたる過程、プロセスです。イメージにあったものがあるかどうか、買い物ひとつとっても非常に大事なことです。とことん、好みのものを探しつづける。妥協は一切しません」。
完成度の高さは目指さないのに、妥協はしないんですか…。
「むしろ、妥協しないのは、完成度の高さを求めていないからじゃないですか?完成度を求めたら、効率とか、手間ひまとか、予算とか…。案外気になっちゃう気がするんですよね…。完成品がそれに見合った手間ひまと効率と予算でまかなわれていないと、人に誇るにもなんとなくバツが悪いというか…。そういう面って、あるような気がしませんか?趣味の世界、趣味のサークル同士で競いあうような性質のあるもの、って…。私は、そういうのとは一切無縁だから、とことん妥協せず、材料を選び、探せるし、聞けば分かること、調べれば分かること、も簡単には済まさない。自分なりにあちこちぶつかりながら道を探していく…。とことん、ひとりきり、誰にも頼らない。自分と向き合う時間です。その製作の道筋、プロセスが、なにより愉しいんです!」。
う〜ん、分かったような、分からないような…。でも、おひとりさまの世界の奥が深いことは理解できました!お話、ありがとうございました。