好きな絵の前にゆっくり佇む、美術館巡りはひとりがオススメ!

加賀美美智子さん(46歳・仮名)のひとりのお愉しみ、それは、ひとりで巡る美術館なのだと言います。

「美術館に行こうと決めた日は、とにかく、考えに考え抜いたオシャレをして出かけるようにしています。自分のファッション、メイク、雰囲気が、美術館の醸し出す極上の雰囲気を壊さないように、…です」。

美智子さんの理想の美術館巡りの日は、春か秋、暑くも寒くもなく、微妙なファッションが楽しめるような時期、しかも、「小雨がそぼふっていたりしたら、最高な美術館巡り日和ですね」。

雨は美術館巡りの大事な小道具。「傘や、ブーツなども、今から来訪する美術館のイメージに合わせてトータルコーディネイトします」。

傘は、入り口で預けるけれど?

「当然です。傘を持って美術作品を見るなんて、もってのほか。無粋なことだと思います。たまに、日傘の柄をバッグの脇からはみださせて美術鑑賞をされているような方をお見かけしますが、傘は預けるべき。たとえ、日傘であっても。あれはあまりよくないこと、マナー違反だと思うのですよ…」。

レインブーツは入り口でよく水気を拭き取ることが大事、だと言います。「美術作品は、水気を嫌います。私は使い捨て雑巾を常備していますよ」。

レインブーツのいいところは、雨に対する滑り止め加工のせいで、靴音が鳴らないことなのだとか。

「かかとのあるタイプの、オシャレなレインブーツでも、滑り止め加工の施されたものが多いので、カツンカツン、という不快な音を館内に響かせなくて済むのです」。

確かに。静かな美術館でヒールのカツンカツンという音は非常に耳障りなものです。「そうでしょう?ご本人はめいっぱいオシャレをしてきているつもりでも、館内や、美術作品との調和が取れていないのです。服装のトータルコーディネートは色味や、服の雰囲気、…つまり、現代絵画を見るなら60年代風のモダンファッションですとか、世紀末ヨーロッパの特設展でしたら、くすんだ色味の、品のよいレースやフリルのお洋服と言ったところでしょうか、そうしたことを吟味するだけでなく、靴が美術館を歩くのに適しているか、そういうこともひっくるめて考えていきたいと思うのです。私自身に限って言えば」。

なかなか厳しい、というか…、ストイックですね。

「ストイックではありませんね。どちらかと言えば、エピキュリアン、快楽主義の方でしょう。すべては、美術館巡りをひとりでとことん愉しむための、自分なりのルール、自分にとって心地よいことはなにか、とうことを突き詰めた上での行動、所作なので…」。

なるほど…。

「日本の美術館は、すてきなところがたくさんありますが、海外の美術館と比べて、人気の特設展などがとくに混雑しすぎるということが難点ですね。もっと、ゆったり美術展を愉しむことができたらいいのに…。急かされるように通路を促されたり、前に人がいるせいで、お目当ての絵が見えない、ということで文句を言われたり、舌打ちをされたり…、ときにはちょっとした小競り合いが始まってしまうことさえあり、…あれは美術作品に対しての冒涜と思ってしまったり…。いえいえ、アーティスト自身は、自分の作品の前で、そのようにと血なまぐさい戦いが始まっていることを〝自分の美の勝利だ〟とほくそ笑んでいるかもしれませんけどね…。訪れる人々の人間観察、という意味合いでの美術館巡りも楽しいかもしれませんね」。

そう言って、美智子さんはおっとりと微笑むのでした…。

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